貧困克服への挑戦 構想 グラミン日本 (グラミン・アメリカの実践から学ぶ先進国型マイクロファイナンス)

バングラデッシュで、モハマド・ユヌス氏（2006年ノーベル平和賞受賞者）がはじめたグラミン銀行のマイクロファイナンスという、貧困層向けの少額融資のシステムを、アメリカでの活動の実績を踏まえ、日本でも実現しようという構想を提唱した著書。市場原理主義に毒されたシカゴ流経済学のアプローチではなく、あくまで、「人間はすべて、本来、ビジネス（仕事）をする創造性と技能を持っており、所得を生み出すことができる」「機会さえ与えられれば、貧しい人でも貧困から脱却して自分と家族のためによりよい生活を創り出すことができる」という信念は、これまでのグラミン銀行の活動の軌跡から証明されてきた。それがユヌス氏の2006年のノーベル平和賞受賞であり、アメリカ最高の栄誉である大統領自由勲章（2009年）、議会名誉黄金勲章（2013年）の受賞でもある。著者は、これまでも、マイクロファイナンスについて、優れた著作を世に問うてきた。2008年「マイクロファイナンスのすすめー貧困・格差を変えるビジネスモデル」（東洋経済新報社）、2009年「マイクロファイナンスー貧困と闘う「驚異の金融」」（中公新書）がそれだ。今回の著作では、さらにすすんで、日本で深刻化する貧困問題への解決方策の有力な1手段としての、日本でのマイクロファイナンスの可能性を具体的に説得力をもって論じている。筆者は、結びに以下のように記す。「貧困のないよりよい社会を創ろうと心に決め、小さくても1歩を踏み出そうとするすべての人に本書を捧げる。」最近少なくなった、優れた志のある本として一読をお勧めする。